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ぎんさんバイバイ……

君がうちに来たのはいったいいつだったんだろう。
また、立川にぼくが一人で住んでいた頃。もう十何年も前の話なんだね。
立川駅のロータリーで里親探しをしているおじいさんがいて、その中に君はいたね。
一人だけみんなにお尻を向けて、悲しそうな声でないていた。
おじさんは言っていたよ。
「この子は虐待されていてね、熱湯をかけられたりとかイロイロあって人間不信なんだ」
どんな流れだったんだろう。里親として適しているかどうかの審査も受けて、君はうちに来ることになったね。
あのロータリーからみえたぎんだこの看板。
だから君のこと「ぎん」って名前にした。

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うちに来てからの君はいつも玄関の土間にいて、外に向かってにゃあにゃあ言ってた。
ぼくが抱っこしようとしてもとてもイヤがって、ホントに人間はきらいだったね。
人間と一緒にいることがイヤなんだろうなぁと思いつつ、ヒモのおもちゃであそんでみたいしたけれど、君は玄関でずっとにゃあにゃあ言ってた。その時は古い古いアパートでね。ペット禁止だからちょっとひやひやしてたな。

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ある日ねてたらダダダって音がして、ぼくは君に踏まれて目が覚めた。
君が昼間に与えたヒモで一人で遊びだしたんだ。
いやいや、なにも夜中に遊ばなくてもって思ったけど、ちょっとうれしかったな。

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それから少しずつ君はぼくに、そして遊びに来た奥さんにも慣れてきて寝ると両足の間で丸くなるようになったね。
ぼくらが動いていると相変わらずダメだったけど、横になるとそっとやってくるようになった。
一度奥さんがインフルエンザで重症になった時に、君はその奥さんの胸の上で寝ていたね。
さすがにどいてもらったよ。とても苦しそうだったから。

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それから、ダンダンと君が慣れてくると今度はぼくらの帰りが遅いのが寂しくなって、帰ってくるととても怒って、そして甘えたね。
でも、どうしても仕事で遅くなるもんだからぼくらは友達がいればいいのかなって思ったんだ。
いのはさ、そうやってうちに来たんだよ。

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でも、結局あんまり仲良くならなかったかな?
いのが来てから君はあんまり寂しがらなくなったけど、甘えん坊になったネ。
いのの病気が発覚してからはケッコウつきっきりになることが多かったから、何かの拍子で座ったりごろごろしていると必ず上にのっかってくるようになったね。

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ベランダも好きだった。
今の家に引っ越してきた最初のころはよく一階から脱走していたけれど、ビビりな君はすぐに戻ってきちゃってね。でも、心配だから探しに行くと余計にビビってパニクってあちこち逃げ回ってた。だから結局ほっておくとちゃんと帰ってくるんだよね。

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でも、あんまりご飯食べている感じがしない割には君はでぶちんでさ。
ぼくは過去に何匹もネコをかってきたけれど、高いところから飛び降りる時に「ドン!」って言う音をさせる子は君が初めてだったよ。
夜中に君がお腹がすいたのかご飯を食べて飛び降りるとね、ドン!っていうからケッコウみんなびっくりして起きてしまったのを知っていたかな?

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少し年をとったからだろうか?
君は二階からすっかりおりなくなって、でも、天気のいい日にベランダの窓を開けていると、よく出て行っては転げまわっていた。
ベランダからよくにゃあ!ってぼくらのことをよんだね。
相変わらず人間不信は変わらなくって、うちにお客さんが来ている時は君はクローゼットの奥や、ガスコンロ、電子レンジの裏、ありとあらゆるところに隠れて、心配してぼくらが見に行くと「にゃあ!」って怒ってた。

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でも、少しずつ少しずつぼくらには慣れてくれて、お腹を出してごろごろ甘えたり、抱っこが下手な奥さんでも10秒くらいは抱けるようになったね。そして必ず寝る時は一緒だった。

君はいのとも違ったし、ちょっとしたことで調子を崩すあるとも違って、うちに来てから一度も病院なんて行ったことなかったし、調子を崩したことがなかったから、最年長だってことはわかってたけどなんか君はずっとそのままぼくらと一緒にいてくれるように思っていたよ。

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そんな君が調子を崩したのは今年の6月に入ったことだった。
最初はよくよろけるようになってね。
君はでぶちんだし、年だから足腰も弱ってきたのかと思ってて、ぶるぶるってした後によろける君の姿はかわいかったし、ぼくらは笑ってそれをみていたよ。ある日完全にころんでしまった君をみて、ひょっとして何か違う病気なのかと心配になったんだ。

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ちゃんと病院に連れて行くのは初めてだったね。
ケースに入れるととんでもない声で
「なご~なご~」
ってなく君をなだめすかしながらぼくらは病院に君を連れて行った。
それから君の闘病は始まったね。

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でも、耳の後ろも腫れてきたし、病院でもその腫れで三半規管に異常をきたしるってことだったからぼくは安心してた。君の命っていう意味ではだよ。耳の薬をもらったり、それが錠剤になったり、そして飲み薬になったり、なかなか治らず一進一退を繰り返している中でもぼくはあんまり心配してなかった。
でも、奥さんはもうその時には覚悟していたって言ってたよ。結局は奥さんが正解だったね。

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君が自分では立てなくなってからはイロンナ事を試したよ。
3時間交代で付き添って寝てみたり、一日交代で付き添って寝てみたり。

でも、君は歩けなくなって、顔も腫れで歪んでしまったけれど、それ以外はげんきでね。食欲もあったよね。
一度は間違って奥さんの指をかんじゃうくらいに。
結局ベッドの上で、ぼくらの真ん中に寝かせるのが君が一番落ち着くんだってわかった時は、それまでちょっと大変だったけどうれしかったな。君が「なご~なご~」言うのはお腹すいた時もあったし、トイレ行きたい時もあったけれど、ほとんどがぼくらと一緒にいたかったんだってわかったからさ。

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相変わらず8月になっても君は立つことができなかったけれど、血液検査をしてみても数値は正常でね。
先生もぼくも腫れの後遺症でもう一生立てないのかもしれないけれど、それでも命には別条ないんだと思っていて、だからこれからの長い闘病を覚悟してね。でも、一緒にいれば安心してくれるんだからと思っていたな。

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その直後だろうか。君が昏睡状態になってしまったのは。
ご飯も水もどうやってもまったくのんでくれなくなったね。
なでてもごろごろともいってくれなくなった。
でも、それでも一緒にいると少し君は安心しているように思えた。なでれば足を少し動かしたりして、君が喜んでくれているように感じた。
だからいつも夜は別途の真ん中にペットシーツもしきつめて一緒に寝たね。
迂闊に寝返りうって君をつぶさないように心配してたよ。

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もう、昨日からは発作も起こすようになって、30分毎に苦しそうな君にぼくらはできることももうないからなでてあげるしかなかったね。
今日は4カ月ぶりの休みの日だったから、昨日は一緒に寝たね。
そして、君はこの日をわかっていたかのように、4カ月ぶりの休みの日に鼓動を止めた。

いのの件があったから、君の病状があった貸して行く中でもぼくらは延命は考えなかった。

治るなら治って欲しいと思っていたよ。でも、治らないなら苦しい時間をぼくらの都合で長くはしたくなかった。君の命は君のものだ。
苦しむ姿をみればぼくらはなんとかしてあげたいと思う。
それはぼくらの気持ちではあったけれど、見守ることだけをぼくらは選んだよ。

君は今、いのの隣に眠っている。
いのの時も思ったよ。君らは虹の橋を歩いたりも、天国にも行かない。
君はただ、たくさんの小さな君になって、自然の連鎖の中でたくさんの生命につながっていくんだろう。
そして、もう増えないけれどたくさんの思い出はぼくらの中で豊かになっていくのだろうね。

ぎんさん。
家の中にはまだ君の気配があるよ。

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君の毛が落ちている。
きみのふわふわした感触はぼくの手の中に残っている。
ありがとうね。ぎんさん。
ぼくらの元で生きてくれて、ありがとうね。
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