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前職の話。。。其の六

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1年後にはケッコウこの店も人が入れ替わって、ぼくも中堅になっていました。中堅になると一階、二階のフロアがあるんですが、どちらかのフロア責任者になることが多くなるんです。兄貴がいる時は兄貴ですが、中堅二人とかの時は交互にどちらかがフロアの責任者になるんです。

そのくらいの時に、また一人新しい人が入ってきました。

その人は年だけだとぼくらより全然上で、もう30歳を過ぎていました。ぼくと同じくらいの身長だから170cmはない感じのひょろっとして黒ぶちの眼鏡。髪は無造作って感じの。

でも、パチンコ店員歴は長い人だったようで店長は副店長候補として、その人を採用したって言っていました。ぼくらにも

「今度来るやつは副店長候補だから」

「へ~、じゃあぼくらの上ですね」

「いや」

「いや?」

「とりあえず一ヶ月試用期間だから、その間は下っ端として使ってやってくれ」

「あ、そうなんすか」

っていうことでその人はやってきました。

最初にぼくらに紹介された時にも店長は

「一応副店長候補だけど、一ヶ月はお前らの下として使ってくれ、お前もそのつもりでやれ」

っていう紹介でした。

「はい、みなさんよろしくお願いします」

って言って仕事が始まりました。

でも。。。仕事ができない人でした。

う~ん、出来ないんじゃないな、やる気がないのか?なんだろうな。みんなそれぞれのスタイルはあるんですが、とにかくお客さんが読んでる時(ランプが点くんです)は、気付いたやつが駆けつけます。それに、そのランプを気にするのは仕事の基本でした。

自分が歩いてきたシマでランプが点いていて、それを兄貴が処理したりすると、ぼくらは兄貴に頭を下げるみたいな仕事でした。

でも、彼は全然気がつかない。ランプの下を通り過ぎるし、シマの端っこでランプが点灯してても振り返らないからそのままスルー。

それでも新人は一階のホールがメインで、一階のホールには常時4~5人常駐しているのでなんとかなるんです。それに新人として使えって言ってもやっぱり副店長候補ですからね~。なんかおかしいなって思いつつも、一週間が過ぎました。

でも、やっぱり時は来ました。彼がスルーしたのを兄貴が処理したんです。それでも気がつかない彼。兄貴が彼を呼びつけて

「お前、使えねぇな」

と一喝。そしたら彼はぶるぶると震えて店を飛び出しちゃいました。いやらしいです。みんな呆然。ぼくはその時気がつかなかったんですが、店員が集まっているので

「どうしたんスか?」

そして、事情を聞きました。兄貴はケッコウ切れていて

「いらねぇだろ、あんなやつ」

「いや~、そういう訳にはいかないでしょ。」

「おれはしらねぇ」

「じゃあ、ちょっと探してきますよ」

となぜかぼくが探しに行くことに。

店を出ると土砂降りの雨。。。あ~あ、なんだかなぁ。

とりあえず近くを走り回ります。そうするとJRAの場外馬券場のところで呆然と雨に打たれる彼発見。

「どうしたんすか!」

「いや、なんか急に怒られて。。。なんでぼくが。。。」

びっくりしました。彼は雨に打たれて泣いてました。30過ぎの男が?あぁ、この人は心が弱い人なんだな。

「まぁ、戻りましょうよ、まずは」

「うん。。。」

しばらく彼の愚痴を聞いてから、一緒に店に戻りました。戻ると店長が待っていて

「あ、見つかったか」

「はい」

「店の外に出る時はおれにちゃんと言えよ!」

「あ、そっすね、すみません」

ぼくらはパチンコの台の鍵を持っているんで、外で取られたりしたら大変なんですよね。

「まぁ、いい、二人とも服乾かしてこい、風邪ひくぞ」

「はい」

それでその日は終わりました。

次の日。

「お前とお前、今日は二階な」

「あ、はい」

ぼくと彼が二階担当になりました。その場合ぼくが二階の責任者。その日は土曜日でとっても客が多い日。いや~、まいったなぁ。彼とだと仕事回らないかも。

始まると案の定ものすごい忙しさです。あっちこっちでランプが点くし。大体二階にあるのは古い機種が多くて故障も多いんです。二階が景品交換所になっているのでカウンターのおばさんも

「大丈夫かい?タフマンいるかい?」

「いや~、ちょっと休めないっす」

みたいな状態。何しろ彼は相変わらずのんびりとただ、フロアを回遊しているだけ。ランプも何もかも放置です。同時に3つランプが点いた時、そして、結局それを全部処理して最後のお客に

「遅いよ!」

って怒鳴られた時、これじゃダメだって思いました。

「ちょっと」

「はい?」

「シマを通り過ぎた時は振り返ってランプの確認してもらえませんか」

「お、おれがランプ見逃したって言いたいのか!」

え~、切れたよ。びっくり。

「そうですよ」

「おれがいつ見逃したっていうんだ!」

「いや、さっきからずっとですよ」

「なんの証拠があるんだ!」

ん~、仕事中ですよ。昨日は泣いてたけど、今日は切れてる。。。心が弱い人かと思ったけどどういう人なんだろ?

「いや、今日は忙しいから、ランプみてやってもらいたいだけですよ」

「おれが仕事してないっていうのか!」

「あのさ」

とぼく。

「まぁ、いいからランプ処理しよう。ほらそこ点いてるから、ぼくはこっち行くから」

ランプがあっちこっちで点灯し始めてたんです。それで処理してしまから出てくると

「さっきのどういう意味だよ!」

まだ切れてる。

「だから、ランプ見逃さないでくださいっていうだけですよ」

堂々巡り。それをカウンターのおばちゃんがみていて店長に通報。店長登場。

「お前ら何してるんだ!」

「あ、すみません!」

と彼。う~む、彼には何やら自分と相手で力関係を判断する基準があるんだな。つまりぼくは下な訳だ。。。

「もめてるんですよ」

とぼく。事実だからね。そしたら店長はぼくと睨みつけて

「ちょっとこい」

そして、彼に

「お前一人でまわしてろ」

と言って店長室に連れてかれました。あ~あ、怒られる。ってか首かもね。この業界変わりはいくらでもいるから首になるのも即日ですから。そして店長室へ

「何があったか説明してみろ」

っていうから正直に説明しました。なるべく公平に。

「あいつが悪いっていうのか」

「う~ん、ありていにいえばそうですね~」

「わかった、ホール戻れ」

「あ、店長」

「なんだよ」

「彼の話も聞いてあげて下さいね。当然、ぼくだけだと偏っていると思いますから」

「わかった、呼んで来い」

「はい」

そして、彼にその旨告げて一人で忙しい中仕事してました。そしたら、しばらくして彼が戻ってきました。そして

「すみませんでした」

さっきまでとは打って変わったような態度でいきなり謝られました。顔には卑屈な笑顔。今にも土下座しそう。それを見てぼくはわかりました。店長からの話で、彼の中の力関係図が変わったことが。彼の中のぼくの位置づけが変わったんだなと。

同時にすっごいムカムカっと。まだ若かったから一番嫌いだったんですよね。そういう人。仕事をさぼるのも、出来ないのもこの業界じゃそれなりにいるからそんなことはよかったけど、その豹変ぶりがぼくには「汚い」って感じられちゃった。

ぼくは年上だろうが、年下だろうが、尊敬した方がいい人は尊敬するし、言うこと聞かなきゃ行けない立場なら言うこと聞くし。心が弱いならみんなに頭下げてればいいのに、人によってそんなに態度を変える人って。じゃあ、自分より立場が低いと思ったらこの人は。。。

「ぼくね」

「はい」

「今、貴方のこと嫌いになったから、二度と話書けないで下さい」

そして、二度と話をしませんでした。

そして、彼は一ヶ月後忽然と姿を消しました。

副店長がそれをぼくに教えてくれました。

「いるんだよ、ああいうやつ。どこに行っても受け入れられずに、受け入れられる努力も出来ずに逃げ回ってるやつ」

「彼はどこに行ったんでしょう」

「しらねぇけど、この業界だってそんなに広くないからな。こっから落ちたら次はもうそんなに残ってないよな」

きらいな人でしたけど、どうか頑張って生きていて欲しいとその時思いました。そして、忘れられない人に、その時なりました。

其の七はこちら

6 thoughts on “前職の話。。。其の六

  1. SECRET: 0
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    完全に小説として読んでしまいました。
    主人公に感情移入してね。。。(笑)
    てつさん。。。
    本気で物書き目指したら~いかがですか?
    書いては、走り~走っては書く。。。みたいなライフスタイルはいかがでしょうか?( ̄▽+ ̄*)

  2. SECRET: 0
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    >雪ん子さん
    あ、そういえば最近アップしてない。。。
    自分の体験だから書けるけど、そうじゃないと難しいですよ~。

  3. SECRET: 0
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    人を嫌いになるって、凄くエネルギーいるんだよね。
    なんとなく気が合わない程度なら珍しくないと思もうけど、その人も自分は傷ついたって思っただろうけど、人を嫌いにならなくてはいけなかったてつさんの方が、傷ついたよね。

  4. SECRET: 0
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    >あすみさん
    嫌いになるにはエネルギーがいる。。。そうですね。
    こいつ嫌いだ!って思ったけど、でも今は心配なんですよ。どこでどうしているのやら。

  5. SECRET: 0
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    ホントにいろんな人がいるんですね。。。
    確かに似た人はいたけど、そんなあからさまな人は見たことないです。
    でも、どこに行っても受け入れられてもらえない人っているんですね・・・

  6. SECRET: 0
    PASS:
    >Pocoさん
    そんな人だからすぐに孤立しちゃうんでしょうけど。だから余計上手くやろうとしてそうなっちゃうんだろうなって、今だと思いますけどね~。

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